『免疫劇場 MEN-EKI BLACK』/東大医学部自主制作映画

<平成26年度 東大医学部五月祭企画 出展作品> ◇免疫機構を実写映画化! ―― 免疫学は、刑事ドラマだと思う。 「非常ベル・目撃者・警察沙汰・潔白証明・指名手配・特殊部隊...」が分かるなら、「ケモカイン・樹状細胞・獲得免疫・MHC1・免疫記憶・Bリンパ球...」など簡単です。 耳を塞げば、短編ドラマ。目を閉じると、教科書の朗読(笑)。新感覚免疫映画。5月17日、公開。 ◇この動画について 東京大学の学園祭「第87回五月祭」で、医学部が出展した企画の一貫として上映された映画です。 (ネットでの公開にあたって一部再編集しています) ◇企画の詳細はこちら DA医LY(日常の医学)|東大医学部五月祭企画 http://daily-mayfes2014.umin.jp ◇五月祭での上映当日に配布した資料 こちらからダウンロード可能です。 http://t.co/22M1GAFle4 ◇詳しい解説 我々の身体は、60兆個もの細胞で構成されている。それら細胞を周囲の異物から防御するため、免疫機構が存在する。 免疫機構を利用し、来るべき感染に備えさせる手段が ワクチン であり、種々の感染症制圧に大きな役割を果たしてきた。 無毒化・弱毒化 された病原体やその断片を注射して特徴を記憶させ、再感染時に効率よい免疫反応を誘導するのがその目的である。 傷害因子が体内に侵入すると、局所的な 血管拡張・透過性亢進 が引き起こされ、 好中球・マクロファージ 等の 炎症性細胞 が遊走する。これらの迅速な応答は汎用的なものであり 「自然免疫」 とよばれる。 自然免疫 は、より特異性の高い 「獲得免疫」 の誘導に必須である。 自然免疫 を担う マクロファージ は、異物を貪食し処理するとともに、 パターン認識受容体 で異物を感知し、 炎症性サイトカイン を産生する。これらの 炎症性サイトカイン は、 炎症反応 を亢進させ、細菌・ウイルス排除の効率を高める。例えば、 マクロファージ が放出した IL-12 は、 NK細胞 を活性化して、抗原非特異的に標的細胞を傷害させる働きをもつ。 これら 自然免疫 で対処しきれなかった異物は、体内で様々な悪影響を引き起こす。自らタンパク質を合成できないウイルスは、増殖のため、感染した細胞の機構を乗っ取る必要があるのである。 このような問題に対処するため動員されるのが 獲得免疫 であり、自然免疫 から 獲得免疫 への橋渡しを担うのが、正常組織内に存在する 樹状細胞 である。 樹状細胞 は、 抗原プロセッシング を行い、所属リンパ節に移動して、リンパ節内で 抗原 を リンパ球 に提示する役割を持つ。 各リンパ節には、他のリンパ球サブセットの機能を補助するリンパ球がおり、 ヘルパーT細胞 と呼ばれている。 ヘルパーT細胞 は、 樹状細胞 や マクロファージ から 抗原提示 を受け、 B細胞 や 細胞傷害性T細胞 を活性化する。 活性化された B細胞 は、抗体を産生し、ウイルスや細菌を無毒化する。 細胞傷害性T細胞 は感染細胞を殺傷し、生体から除去する。 このように ワクチン は 獲得免疫 を誘導するのに十分な効果を持つ一方、事前に処理を施されているため、通常重篤な被害は引き起こさない。一度獲得免疫系が作用したことで、 メモリーB細胞 や メモリーT細胞 が準備され、二度目の感染に対して強く・迅速に応答できるようになる。 メモリーB細胞 は、微量の抗原刺激で迅速に反応し、多量の 抗体 を産生する。 メモリーT細胞 は、同一抗原を提示している抗原提示細胞からの再刺激を受けると、著しく早くエフェクター機能を発揮する。一方、 自然免疫反応 を担う細胞は、一度侵入してきた異物を覚えてはおらず、同じ異物が2度目に侵入してきても、1度目と同じ反応をする。 再感染時、抗原で刺激された B細胞 は、抗原を細胞内部に取り込み、その抗原ペプチドを特異的に認識する T細胞 へと提示する。抗原提示を受けた メモリーT細胞 は、 エフェクターT細胞 に分化して多量の サイトカイン を素早く産生し、生体から抗原を排除する。これら 二次免疫応答 が、強く迅速に引き起こされることにより、生体は感染症の危機を未然に回避することができる。