最強の睡眠時間は何時間か?
睡眠についてのお話をすると必ず聞かれることがあります。それは、「何時間睡眠
が一番健康に良いのか?」ということです。あなたは、何時間睡眠が良いと考えてい
ますでしょうか?
メディアでは、「7時間睡眠が適当」だとか、「8時間は必要だ」とか、 いろいろ
な説が流れていますが、実際は、あまりよく分かっていないのが現状です。
現代人は非常に忙しい方が多いので睡眠時間を短くして、その分の時間を勉強や仕
事に充てたり、遊びに充てたりできれば、より充実した活動ができるんじゃないかと
考える人もいらっしゃるかと思います。
かの有名なナポレオンは短眠だったと言われ、1日の睡眠時間はわずか3時間ぐら
いだったそうです。
実際に、あまり寝なくても平気と言う人は私の周りにも何人かいます。「1~2時間
しか寝なくても平気」「3時間ぐらいで調子がいいな」と言う人も存在します。なぜ、
彼らは短眠でも大丈夫なのでしょうか。
短時間睡眠の弊害とは?
最近の研究によると、短眠の人は通常の睡眠時間の人と遺伝子が違うといったこと
が言われています。つまり、遺伝的に短眠でも平気な人、そうでない人がいるという
ことが分かってきています。そのようなことを踏まえると、誰でも短眠ができるとい
うわけでもなく、逆に短眠の人は無理に長時間寝る必要もないということになります。
要するに、睡眠時間はあくまで個人差があるということです。それによって適した睡
眠時間は当然違ってくるわけです。それでは、適した睡眠時間を考える前に、遺伝的
に短眠ではない人が無理に睡眠時間を削ることは良くないのでしょうか。
一言に良し悪しを判断することは難しいのですが、ショウジョウバエの実験からこ
のような研究結果が分かっています。
実験的に短眠のショウジョウバエを作って研究したところ、短眠のショウジョウバ
エは短命で早死にだったといった実験の結果があります。人間の場合は寿命が長いの
で、短眠の人と長時間眠る人を比べて、その結果を出すというのは実は非常に難しい
ので、ある意味永遠に結論は出ないのかもしれませんが、ショウジョウバエの実験で
はこのような結果が出ています。
短時間睡眠と糖尿病の関係
短時間睡眠で大丈夫な人も実際に存在するのですが、多くの人はそうではありませ
ん。元々短時間睡眠ではない人が、無理に睡眠時間を削っていると、さまざまな弊害
が出てくる可能性があります。このような睡眠時間と病気の因果関係については、い
ろいろな研究が行なわれています。
例えば、短時間睡眠が続くと、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌が
悪くなり、血糖値が上がって糖尿病になる危険性が高まるという研究データもありま
す。もちろん、睡眠時間の短い人が全員、糖尿病になるということではありませんが、
糖尿病になる傾向があるということです。
また、睡眠時間が短いと、食欲を抑制するホルモンであるレプチンの分泌量が減り、
太りやすくなるという研究結果もあります。肥満の測定指標としてBMI (Body Mass
Index) という数値があります。これは、体重を身長の2乗で割ったもので、BMIが18.5
以上25未満であれば標準体型とされており、BMIが25以上であると肥満体型というこ
とになります。
そして、BMIと睡眠時間の相関関係について研究したデータも発表されています。こ
の研究によると、睡眠時間が7~8時間の人が一番太っている人が少ないのです。過眠
の人たちと3時間ほどの短眠の人たちはBMIが高い結果になっており、特に3時間睡
眠の人たちは一番BMIが高いという結果になっていました。
このような研究結果から見ると 短眠も、過眠もあまり良くない可能性があります。
短時間睡眠と高血圧の関係
睡眠時間が短いと交感神経の緊張状態が続き、高血圧になりやすくなるというデー
タもあります。
人間の自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経は緊張した状態、
もしくは運動した時など、主に日中に働く神経です。
逆に夜寝ている時、リラックスしている時などは副交感神経が活発に働くようになっ
ています。ですから睡眠中は、この副交感神経がメインとなって働くのですが、睡眠
時間が短いと副交感神経の出番が減ってしまいます。交感神経の方が頑張ってしまい、
緊張した状態の時間の方が長くなってしまうのです。このような状態が続けば、高血
圧になる可能性が出てきます。
その他にも、睡眠時間が短いと精神が不安定になり、うつ病、不安障害、アルコー
ル依存症、薬物依存症などになる確率が上がるといった報告もあります。また、認知
症になりやすくなるといったデータもあります。
10時間睡眠はどうなのか?
あなたも睡眠不足という状態を経験されたことがあるかと思います。睡眠が足りな
い状態が日々蓄積されていくことを、最近では睡眠負債と呼ぶようになっています。
まるで借金のように睡眠の不足が積み重なっていくイメージです。
この睡眠負債ということばは、今でこそいろいろな人が使っていますが、私の著書
である『東大ドクターが教える集中力』でも睡眠負債について触れています。睡眠に
ついて詳しく解説していますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
今回は、スタンフォード大学のバスケットボール選手10名に対して行なった実験をご
紹介します。どのような実験かというと、バスケットボール選手10名に毎日10時間
ベッドに入ってもらい、これを40日間継続し、変化を見るといったものです。10時間
と言っても、その間完全に眠っていた人、そうでない人もいますが、とにかく毎日10
時間ベッドに入ることを続けたわけです。
この実験後、選手たちのパフォーマンスはどうなったかと言うと、
・80メートルの反復走が0.7秒速くなった。
・フリースローがそれまで10本中8本成功していたのが平均8.9本にアップした
・3ポイントシュートが、15本中10本成功していたのが平均11.4本にアップした
といった数値の改善が見られました。
また他にも、選手たちの神経の反応速度も計測しました。これは、タブレット画面
に丸が表示されたら、ボタンを押すといったテストで、どのぐらい速く反応できるか
を見るものです。この速さのことをリアクションタイムと呼びますが、こちらの計測
結果も、実験前と実験後では数値に改善が見られたそうです。
選手たちは、日中はバスケットボールの練習をしているので、パフォーマンスの数
値の向上は、単純に練習の成果では?と疑問に思われる方もいるかもしれません。し
かし、これらの数値は実験の終了後、つまり10時間ベッドに入る事をやめた後は、元
の数値へ戻ってしまったそうです。
この実験から、睡眠時間を十分にとり、睡眠負債をなくせば、パフォーマンスの向
上、集中力の向上につながるということが分かります。
睡眠不足が続いていると言う方は、一度しっかり睡眠をとってみることをお勧めし
ます。
結局のところ、適当な睡眠時間というのは個人差が大きく、自分自身に合った睡眠
時間を見つける必要がありますが、確実に言えることとしては、短時間睡眠で無理を
することは種々の病気のリスクを高めるため良くないということです。
それでは、どのようにして最適な睡眠時間を見つけることができるでしょうか?
最適な睡眠時間を見つけるための唯一の方法
最適な睡眠時間を見つけられると、毎日が最高のコンディションで生活できる一歩に近
づくということです。それでは、最適な睡眠時間を見つけるにはどのようにすれば良いで
しょうか。
それは、自分自身の睡眠についてフィードバックをすることです。
最高のコンディションを得るためには、フィードバックが有効です。
コンピュータと同様、人間も入力をすればそれに対して何らかの答え、つまり、反
応が出てきます。この反応に対して軌道修正をし、改善を繰り返していくことがフィー
ドバックという方法です。
ここで、最適な睡眠時間を得るためのフィードバック法をご紹介します。
ますは、前日の就寝時間とその日の起床時間をメモに残しておきます。例として睡
眠時間が6時間だったとします。その日は、1日中眠かったという結果が出れば、自分
には6時間睡眠では足りないということが分かります。
この結果を踏まえて、軌道修正をして改善を図ります。
6時間の睡眠時間では足りなかったので、次は8時間の睡眠時間を試します。8時
間寝てみたら、今度は頭がボーッとするので寝過ぎのようだ……となれば、自分には
8時間の睡眠時間は長すぎるということが分かります。
このように、自分の反応を見ながら睡眠時間を調整していきます。そして、7時間
の睡眠時間で一番調子が良かったという結果が出れば、自分に合う睡眠時間は7時間
だという事が判断できるのです。
今回は睡眠時間を例にとりましたが、コンディションにはいろいろな要素が関わっ
てきます。
睡眠ひとつとっても、睡眠時間の長短だけでなく、何時に寝るか、何時に起きるか
といったことにも左右されます。それ以外にも摂る食事やカフェイン、アルコール、
いろいろな要素が影響するのです。
このような要素をひとつひとつ検証していくことでより良いコンディションを保つ
ことができるようになります。私は、これらのフィードバック項目をまとめた「自己
管理シート」というものを作成して毎日記入しています。
熟睡して疲れを取るための最重要ポイント
フィードバックを行い自分に合った最適な睡眠時間を見つけられたとします。しか
し、その睡眠時間で熟睡できていなければ疲れをとることができず、日中のコンディ
ションは最高とは言えないと思います。
そこで、今回はどのように睡眠をとれば、しっかり疲れを取ってリフレッシュでき
るのかを解説したいと思います。
まずは、睡眠の周期についてお話をします。
人間の睡眠は、浅い眠りであるレム睡眠と深い眠りであるノンレム睡眠を周期的に
繰り返していると言われています。
レム睡眠のときは、眠っているのにも関わらず目が素早く動いているため眠りが浅
いのです。レム睡眠のレムは、Rapid Eye Movement (REM) の略で直訳すると急速眼
球運動のことです。
これに対して、ノンレム睡眠はNon REM なので、急速眼球運動が行われておら
ず、深い睡眠になっているということが分かります。
この2つの睡眠の周期ですが、おおよそ90分、つまり1時間半の周期で図1のよう
にノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すと言われています。もちろん個人差があるの
で、きっちり90分というわけではありません。これより間隔の短い人も長い人もいま
すが、だいたい90分の周期ということです。
睡眠は90分の周期を繰り返しながら、だんだんと浅い眠りになっていき、朝になる
と目覚めるわけです。ここで大事なポイントは、最初の90分の深い睡眠の質を高めら
れれば、熟睡し、疲れをとることができるということです。もちろん、次の周期、さ
らに次の周期もずっと熟睡できた方が良いですが、どうしても忙しく、短い睡眠時間
しかとれないという場合は、特に最初の深い眠りの質が重要になります。
では、どうすれば睡眠の質を高め、熟睡することができるのでしょうか。
熟睡できる環境をつくる方法
熟睡するためには睡眠時の環境を整えることが必要不可欠になります。熟睡するた
めに大事なポイントを一言で言うならば、余分な刺激を減らすということです。
刺激は、人間の五感を通して入ってくるものです。 五感は、視覚・聴覚・触覚・嗅
覚・味覚の5つのことで、視覚は目から入ってくる光の刺激、聴覚は耳から入ってく
る音の刺激、触覚は皮膚から入ってくる温度や手触りなどの刺激、嗅覚は鼻から入っ
てくるにおいなどの刺激、そして味覚は舌から入ってくる味などの刺激を感じとります。
睡眠時に五感を刺激するものがあると、睡眠を妨げることになり熟睡できなくなり
ます。それでは、五感への刺激を減らすためのポイントを解説していきます。
まずは視覚への刺激です。人間は明るいところでは熟睡しづらくなってしまいます。
凄く疲れている時などはそれでも眠れてしまいますが、寝室はなるべく暗くした方が
いいです。
眠りを促すホルモンであるメラトニンは、明るい場所では分泌が増えないため暗い
寝室で眠ると良いです。
次に聴覚への刺激ですが、寝室は静かな方が良いです。もし、騒音のある環境で眠
る場合には、耳栓をするなどの工夫をすることで、音の刺激を軽減することができま
す。
そして触覚への刺激です。ベッドや布団の寝心地が悪いと、身体が痛くなってしま
います。これも自身の身体に合ったものを選んだ方が良いでしょう。
また、冬場は掛け布団が重たいものになりがちです。重くて圧迫感があると、熟睡
を妨げてしまいます。羽毛布団などの軽量で保温性もある布団を使う方が刺激は少な
くなります。
触覚の刺激ということでは、温度や湿度の問題もあります。寝室が暑すぎたり、寒
すぎたりすると目が覚めやすくなってしまいます。快適な温度と湿度を保つことが大
切です。
五感のうち、嗅覚や味覚に関しては今回の話にはあまり関係ありません。臭くて眠
れないという状況はそれほど多くないと思います。ただし、鼻や口は睡眠、そして健
康のとても重要な伴を握っているのです。
口で呼吸すると病気になる!鼻呼吸のススメ
嗅覚や味覚は、一見睡眠とは関係なさそうに思えますが、実は、鼻や口は重要な役
割を果たしているのです。
人間は常に呼吸をしており、鼻と口は、そのための空気の通り道です。睡眠時間に
は個人差がありますが、仮に8時間眠るとすると、1日24時間のうち3分の1は睡眠
時間ということになります。つまり、この間の鼻や口の状態は身体にとって大きな比
重を占めるのです。
睡眠中、ずっと口で呼吸をしているとどうなるか想像してみてください。当然のこ
とながら、口の中が乾燥してしまいます。特に冬場は、空気が乾燥しているので、口
の中も乾燥しやすいです。
眠っている間の8時間、口の中を開けっ放しにしていれば、口の中は乾ききってし
まい、唾液の分泌も追いつきません。
唾液には、殺菌効果があるので、それが減ってしまうと、虫歯や歯周病になりやす
くなります。
口腔内のことに限定して考えても、口で呼吸することはこれだけの弊害があるので
す。
また、口から入る空気は喉を通り肺に入ります。この空気は乾いていて、埃も吸い
込みやすいです。
それに対して、鼻から入る空気は、副鼻腔といって鼻の中の空洞を通るため、温め
られて加湿された状態で肺に入っていきます。さらに、鼻はフィルターの役割もする
ので、埃も入っていきにくいのです。
口呼吸と鼻呼吸は大差がないように思えますが、実はこのように大きな違いがあり
ます。身体のためには、鼻から呼吸した方が好ましいです。
日本病巣疾患研究会によれば、口呼吸をしていると、虫歯や歯周病だけではなく、
アレルギー、リウマチなどが進行する人がいるという報告があります。
睡眠時の呼吸が重要だということはお分かり頂けたかと思いますが、では意識のな
い睡眠時に、確実に、強制的にでも鼻呼吸をするためにはどうすればよいでしょうか?
私のお勧めは、寝ている間、口にガムテープを貼るという方法です。ガムテープと
言っても紙製で、粘着力がそれほど強くなく、剥がしやすいものを使います。コンビ
ニやスーパーマーケットなどで簡単に手に入ります。
ガムテープと言うと、驚く人が多いのですが、実際に貼って寝て頂ければ、朝起き
た時に口の中が潤っていて乾燥せず、とても快適だということが実感できるかと思い
ます。私も実践しています。
ガムテープの唯一の難点を挙げるとすれば、寝ている間に咳が出る時の対処です。
いちいちテープを剥がさなくてはならないので、そこがデメリットと言えばデメリッ
トです。しかし、それさえ気にならないのであればお勧めの方法です。
また、咳が出やすいからガムテープでは困ると言う場合には、鼻呼吸用の口をとめ
る専門のテープを使うのがいいでしょう。これは薬局に行ったり、インターネットで
検索したりすれば手に入ります。この専用のテープをつけて口を閉じて眠る方法でも、
ガムテープと同様の効果が得られます。
私自身も、以前は喘息があり、特に冬場は症状が悪化していました。しかし、睡眠
時に鼻呼吸を心がけるようにすると喘息の発作が出なくなり、とても調子が良くなり
ました。喘息やアレルギーなどを持つ方は、ぜひ一度試してみてください。
アルコールを飲めば熟睡は可能?
熟睡をする上で、睡眠環境をつくることの重要性をご理解頂けたかと思います。そ
れでは、熟睡するためにアルコールを飲むのはどうでしょうか?
アルコールを飲むと眠くなるので、寝つきに良い効果があるのではないかと考える
人も少なくありませんが、実はこれは間違った発想です。
アルコールには尿が出やすくなる利尿作用があります。せっかく眠ってもトイレに
行きたくなり、途中で目が覚めてしまい、むしろ眠りを妨げる要因になるのです。
また、もうひとつ気をつける点として、アルコールは、この利尿作用があることか
ら、翌朝は脱水症状を起こしてしまいます。特に大量のアルコールを飲んだ翌朝は要
注意です。
アルコールを飲んだ翌日は、いつも以上に水分をしっかり摂る必要があります。こ
れを怠ると、血液がいわゆるドロドロ血になってしまって心筋伷塞など血管が詰まる
病気になりやすくなってしまいます。それだけでなく、アルコールは飲み過ぎれば内
臓、特に肝臓や胃腸に負担がかかります。
このようにアルコールにはいろいろな弊害もありますが、対策はあります。
お酒を全く飲まないというのが一番いいのですが、それが厳しい場合には、お酒を
飲んだときは、飲んだ時間から少し空けて、眠くなったら眠るというパターンがお勧
めです。あるいは、アルコール度数の低いお酒を長時間ダラダラ飲むのではなく、
ウォッカなどの強いお酒を就寝前に少量飲み、すぐ眠る方がまだ睡眠の質は損なわれ
ません。ただ、お酒が強い弱いというのは個人差が大きいので一概にはいえません。
どのような飲酒のパターンが自分自身に合うのかを見極めるには、自己管理シート
を付けると良いでしょう。自己管理シートを付けて、自分がどういうパターンで生活
したときが一番調子が良いのかを探り、自分に合ったお酒の飲み方を見出すのがよい
でしょう。
脳を活性化する仮眠のとり方
十分な睡眠時間がとれて、しっかり熟睡し、疲れがとれる……そのような人は、日
中に眠気を感じることはあまりないかと思います。しかし、忙しい現代人は、そこま
で十分な睡眠をとれないことも多く、どうしても昼間に眠気が出てしまうことがある
のではないでしょうか。
眠気を感じた状態のまま、仕事や勉強を続けるのでは効率が落ちて、集中力も低下
してしまいます。そのようなときは、適度に仮眠をとった方が仕事や勉強の効率をアッ
プできるのです。
今回は、仮眠はどのようにとると良いかを解説していきます。
まず、仮眠の時間ですが、1回あたり5~15分、長くても20分以下と、あまり長
くとらない方が好ましいです。
なぜ短い方がいいのでしょうか。
睡眠は90分間隔で深い眠りであるノンレム睡眠と浅い眠りであるレム睡眠を周
期的に繰り返すということを説明しましたが、仮眠の時間が長いと、眠りが深く
なり過ぎてしまいます。
眠りが深くなると、目覚まし時計を鳴らしてもあまりスッキリ起きられなくなり、
覚醒するのに時間がかかるので、すぐに仕事や勉強に取りかかれなくなってしまうの
です。なので、1回あたりの仮眠は5~15分に抑えることがポイントです。
次に、仮眠の回数です。仮眠は1日に何回とってよいかというと、5~10分程度の
短い時間であれば、1日に数回とっても問題ありません。ただし、間隔は2時間ぐら
い空けるのが良いでしょう。
まとめると、1日に数回5分~15分の仮眠をとれば眠気が消え、集中力を高めるこ
とができるということです。
「長く眠らないと眠気がとれないのでは?」と、誤解している方も多いのですが、こ
のように短い眠りでも眠気はしっかりとれるので、ぜひ一度お試しください。
仮眠の前のコーヒーがおすすめ
あなたは、パワーナップと呼ばれる方法をご存知でしょうか。パワーナップは日本語
に訳すと、積極的な仮眠というニュアンスがあります。
眠るというと、なんとなく消極的なイメージがありますが、パワーナップとは、集
中力をアップするために仮眠を積極的に活用するという意味です。
よく耳にする瞑想、マインドフルネスと同様に、集中力をアップするのに役立つ手
法で、最近では、グーグルをはじめ大企業もこのパワーナップを導入しています。
日中眠くなるのは気合が足りないからだと思っている人も多いと思いますが、そう
ではありません。眠気は、あくまで生理的な現象です。無理に我慢しても効率は上が
らないので、仮眠をとり入れる必要があるのです。
パワーナップのとり方には3つポイントがあります。それは、
・正午~15時の間にとる
・時間は20分以内
・寝る前にカフェインをとる
です。前項でも解説しましたが、目覚めをよくするためにも、仮眠はあまり長くとら
ない方がいいです。
さらに、仮眠をとる前にカフェインを摂ることがポイントです。カフェインの含ま
れた飲み物、例えばコーヒーを飲むとします。このコーヒーの中のカフェインは飲ん
ですぐには効きません。
ちょうど仮眠から5~20分後、つまり目覚める頃にカフェインが効いてくるので、
スッキリと起きることができるのです。
これがパワーナップの方法とメカニズムです。
また、仮眠はどのような体勢でとってもかまいません。椅子に座ったままの状態でも
横になった状態でも、あなたが眠りやすい体勢で大丈夫です。
パワーナップを取り入れ、ぜひ集中力アップに役立てて頂ければと思います。
スッキリと目覚める方法
ここまでで、睡眠時間や熟睡、仮眠についてお話してきました。いくら良い睡眠を
得られたとしても、目覚めが悪かったら後味が悪いですよね。そこで、今回は目覚め
をテーマにお話をしていきます。
朝、起きるときには多くの人が音の鳴る目覚まし時計を使います。この音の鳴るタ
イプの目覚まし時計には、実は問題点が2つあります。
1つは、ジリリリ……という音が不快という点です。もう1つは、自分の眠りの周
期と関係なしに音が鳴るという点です。
人間は約90分間隔で深い眠りと浅い眠りを繰り返すことについて解説しましたが、音
の鳴る目覚まし時計はこの睡眠の周期に関係なく、セットした時刻に鳴ります。この
時に、深い眠りであるノンレム睡眠の周期に入っていればパッと目覚める事ができず、
朝から不快な気分になってしまいます。また、それがジリリ……という耳障りな音な
ので余計、不快な気分が増すといったデメリットがあります。
人間は、朝日とともに目覚めるライフスタイルが理想です。ただ、日の出は季節に
よって異なるので、日の出に合わせて、起きる時刻も変えるというのは、学生やビジ
ネスマンにはなかなか難しいものがあります。
逆にいえば、冬場は日の出が遅くなるのでまだ真っ暗な中で起きなくてはならない
人も多いです。そういった人にお勧めなのが、光るタイプの目覚まし時計です。私は
かれこれ20年近くこのタイプを愛用しています。タイマーをセットしておけば、朝に
なるにつれ、段々明るくなるという時計です。
アマゾンや楽天市場で「光る目覚まし」と検索すると、人気ランキングなどの情報
がいろいろ出てきます。光る目覚まし時計の見分け方の大事なポイントは、光が強い
ものかどうかということです。
理想的な光の強さは、2500ルクス以上です。2500ルクス以上であれば、精神に安定
をもたらすセロトニンというホルモンの分泌が増えるので、なるべくなら光の強いも
のを選ぶようにしましょう。
自力で目覚める方法
今回のテーマである自力で目覚める方法とは、目覚まし時計なしで起きる方法とも言い換
えることができます。
多くの人は朝に目覚まし時計を使って起きているかと思いますが、中には目覚まし
時計を使わずに、自然に起きられる人もいます。このような起き方を、自己覚醒と言
います。自分自身で目覚めるという意味です。
この自己覚醒には主に2つのメリットがあります。1つめは、スッキリ起きられると
いうことです。目覚まし時計で突然起こされるわけではないので自然に目覚めること
ができます。
人間の脳波は、睡眠中は周波数の少ない、穏やかなデルタ波がメインになっていま
す。そして、起床時刻が近づくにしたがって、眠りが浅くなり、デルタ波は減少します。
人間の能力とは不思議なもので、このように「自分で起きよう」と意識しただけで
無意識のうちに脳波が覚醒する方向に変化し、スッキリと起きられるのです。
また、2つめのメリットですが、自己覚醒は午後の眠気を軽減し、日中の居眠りが少
ないという報告もあります。これは、集中力アップにも有効です。
医学的な観点からいうと、自己覚醒をする時は、コルチゾールというホルモンの分
泌が増加します。一般に、コルチゾールの分泌は朝が最も高く、夜には低くなり、生
体の一日の活動リズムを整えるといわれています。この点からも、自己覚醒の方が生
理的にも好ましいのが分かります。
では、自己覚醒するための具体的な方法をご紹介します。
まず夜寝る前に、朝の起床時刻を意識します。たとえば朝7時に起きたいのであれ
ば、7時に起きる自分を明確にイメージしてから眠りにつきます。これを繰り返すうち
に、だんだんと思った通りの時刻に起きられるようになります。
とてもシンプルな方法ですが、生理的にも自然で、日中の集中力も高まります。
興味のある方はぜひ一度試してみてください。